ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

<スマホ>というツール そして手

 この1週間、本(「逃亡者」中村文則)のページをめくるより、はるかに多くの時間、鉛筆を持ってスケッチブックを開いていました。「逃亡者」については、とても面白いので読了後に書きます。さすが中村さん、という感じで読み進めています。

 デッサンは、<スマホ>についてとりとめなく思いをめぐらしながら描いていました。<手>を描くのが最初のテーマだったのですが、スマホを操作する手を描き込むにつれ、現代において手の持つ表情とスマホは切っても切れない関係に見えてきたのです。

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              <メッセージ> 鉛筆、4B〜4H

 例えば人と人の出会いと別れに、スマホはなくてはならないツールです。さまざまな個人のドラマと喜怒哀楽の<通路>なんですね。

 この指先はこれから、どんなメッセージを打ち込むのか。「会いたい」「ありがとう」「ごめんなさい」。もしかすると永遠の、「さようなら」かもしれない...。鉛筆を使いながら、なんだか短編小説の構想を練っているような感じでした。

 そんなスマホも、やがて別の何かに取って代わられ、過去のツールになっていきます。そのころの社会に、自分が生きているかどうか分かりませんが。

 もう1点、<歳月>を課題に、女性の顔に挑戦しました。ぴちぴちの若さより、しっかり年月を積み重ねた表情が美しいと思うのは、自分も年齢を重ねたからでしょう。実はテレビで見る若いタレントさんたち、似たような化粧でわたしあまり顔の区別がつきません^^;。もう少しすれば、老人の顔に刻まれた深い皺にも美しさを感じるようになるだろうか(頭で理解している美しさと、感じる美しさは別物です)。

f:id:ap14jt56:20200516212925j:plain <かお>鉛筆、2B〜4B

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f:id:ap14jt56:20200516213150j:plain 明暗だけ置いた描き出し段階

 鉛筆はいつか油彩を描くための助走、いろいろテーマを模索している現在です。油で何を描くか、人物か、静物か。風景は無理だな、わたし。

 油彩で筆を持ったら、死ぬまでその1点だけ描き込むのもいいかと思っています。F20くらいの、ほどほどの大きさのキャンバスで。公募展に挑戦する気なんてさらさらないし、死ぬまで完成しなくても、死んだ時点で未完の完成というわけです。そもそも極私的な趣味だから、どんなスタイルも許されるのがお気楽です。

 でも来週は一段落して、また読書にスイッチしようかな。