ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

新しい階級社会の出現 今とは 〜「上級国民/下級国民」橘玲

 今週のベストセラー総合9位(2019.8.14集計)に入っていて、読んでみたのが「上級国民/下級国民」(橘玲=たちばな・あきら=、小学館新書)です。事前知識で興味をひかれたのですが、ちょっと参ったのが刺激的な言葉を連ねたカバー。「何だよこれ..」と、本を買って外したら、下にもう一枚普通のカバーが。アイキャッチの重要性は分かるけど、読者も含めた出版文化の質について考えてしまったり。いえ、ふつうに面白い視点からの分析だったから、よけい派手な付け足しカバーが気になったのです。

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 上級国民、下級国民というのは、ネットスラングなのですね。知らなかった。では、昔からの上流階級、下流階級との違いは何か。かつては努力し、頑張れば、下流から上流へと這い上がる可能性がありました。つまり社会(階級)に流動性があった。ところが現在は、「貧困の連鎖」という言葉もありますが、流動性が失われた社会。少なくとも〝下級国民〟はそう考えています。それが「分断」です。

 これってつまり、江戸時代の士農工商とか、インドのカースト制のような、もはや個人が持つ属性から逃れられない、新たな身分制度の誕生です。持てる者は異性にもモテ、持たざる者は異性にもモテず、というエロスの流動についての社会分析も、少子高齢化を考えればなかなか面白い。

 「分断社会」なので、上級への移行は不可能、だだし上から下へのドロップアウトはあり得る、というわけです。平成の30年間に、いかにしてこの分断が形成されたか、令和の未来はどうなるのか。さらに、分断は先進諸国共通の現象として展開するグローバルな分析(特にトランプとアメリカ国民)も刺激的です。

 世界中の〝下級国民〟にとって、唯一のよりどころ、アイデンティティーとは生活の場の揺るぎないリアル、つまり「国」です。例えば、どんな境遇であろうと「わたしは日本人だ」。ネタばれになるので詳細は書きませんが、ネトウヨ(ネット右翼)に関する記述など、わたしの中で、もやもやしていたことがすっきり整理できました。

 言うまでもありませんが、一つの視点や1冊の本が、いま起きていることの本質を語り尽くすはずもありません。もっと説得力のある反証も、不可能ではないでしょう。その上で、お勧めの1冊です。でも、いろんなデータが引っ張り出されていて、ちょっと疲れるかもw。

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