ことばを食する

本たちとの、出会い、すれ違い、言葉との恋愛。つれづれなるまま記していきます

はじめに..

 

 本との最初の出会いを記憶に辿ると、曖昧な映像や感情の痕跡が漂う深海を、手探りする気分になります。触れてくるものはあるけれど、確かなものをつかみ取ることができません。

 あきらめて少し水面に向かうと、ようやくしっかり輪郭を持った記憶がいくつも現れてきます。例えば手書きのような書体で「コタンの口笛」と題が書かれた児童書。作品と著者名がセットで記憶に刻まれた最初の本でした。ネット検索してみると<石森延男 東都書房 1957年 全2巻>と出てきます。当時、小学生の私が読んだのは、初版が出てからずいぶん年数が経ってからだったことを知りました。

 社会に出て組織に組み込まれ、長く言葉で伝えることを仕事にしてきました。それは自分にとって、幸福であり、不幸でもあったと思っています。書くことにも、読むことにも様々な前提や思惑をからめて向き合うことで課題をこなし、ささやかなキャリアを積み上げてきました。

 そろそろ、そんな本との付き合いを終わりにしたい。仕事の道具ではなく、子どもの無邪気さとつたなさでもう一度本と出会い、あるいは再会し、ことばを味わいたいと思っています。

 

 味わうといえば今日、うちのサクランボが豊作でした。  

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