ことばを食する

くーの、極めて私的な読書覚え書き。誰かにお薦めできると思った本を取り上げます

美術書・戯曲・他

前のめりに語り尽くす 本の数々 〜「本屋さんで待ちあわせ」三浦しをん

ページをめくりながら何回笑い、なるほど、なるほどとうなずき、何回スッキリしたか、いちいち数えていなかったので分かりません。世の中、何であれ、同じ趣味を持つ人がその趣味についてディープに語った本には惹かれるものです。 「本屋さんで待ちあわせ」…

懐かしい風 アール・ヌーヴォーの華 〜アルフォンス・ミュシャ展図録

ミュシャのポスターや絵画の魅力は、最初に出会って以来、わたしにとって不思議な「何か」であり続けています。その曲線と色彩、女性たちの佇まい。作品の前に立つと、パリでさまざまな文化が花開いたベル・エポック、叶うことなら行ってみたかったその時代…

 幸せってなんだっけ? 〜「ゴドーを待ちながら」S・ベケット

谷川俊太郎さんの詩句に、こんなのがあります。 どんなに好きなものも 手に入ると 手に入ったというそのことで ほんの少しうんざりするな これ、分かる気がしませんか。それどころか時には、手にも入っていないのに、自分のものになると分かった瞬間から、求…

卒塔婆小町、老いて無残 〜「近代能楽集」三島由紀夫

千年も昔の夕暮れどき、闇が迫る京の都の外れ、百歳(ももとせ)とも見える乞食の老婆が、朽ちかけた卒塔婆(そとうば・そとば)にぐったり腰掛けています。顔は皺に覆われ、ボロをまとった姿からは垢と脂の酸い臭いが漂ってきます。 たまたま通りかかった高…

視線の向こうにあるもの 〜「松本潮里画集 迷想園」

5月というのに、連日の30度超えにぐったりして帰宅。昨夏の猛暑からいよいよおかしくなり始めたと思える地球環境は、いったいどうなっていくのだろう。身の丈を超えた壮大な心配をしつつ、暑さも、寒さもない、不思議な世界のページをめくりました。 「松本…

写実ということの底知れなさ 〜「どうせなにもみえない」諏訪敦絵画作品集

最初にお断りしておきます。「写実ということの底知れなさ」は、この作品集に寄稿した作家・古井由吉さんの文章のタイトルです。これから書こうとするのはもちろんまったく別物ですが、タイトルを付けるとしたらこれ以上の言葉が見つかりそうにありません。 …