ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

雪道を走ってタマネギを買う

先日のことですが、あてもなくぶらり朝から車を出しました。道には前夜からの積雪があり、まだ雪も舞っていて、本当は外出を控えたほうがいい日。しかし家に籠っていると息が詰まりそうで、何をしても集中できる気がしなかったのです。 日々のストレスは、気…

輝き続ける頽廃文学の北極星 〜「眠れる美女」川端康成

川端康成の「眠れる美女」は、昭和35年から翌年にかけて雑誌「新潮」に連載された100ページに充たない中編小説です。ノーベル賞作家・川端の...というだけでなく、近現代の日本文学における最高到達点の一つだとわたしは思います。 もしかすると好きになれな…

少女は痛快に青春を駆ける 〜「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」 読み始めの冒頭が、この宣言です。頭の中が「?」になったわたし。 宣言したのは中学2年の女の子で主人公の成瀬です。呼びかけられた島崎は、同じマンションに暮らす同級生の親友。わたしが思ったのは...成…

だからわたしは全集にこだわる

本に関して、これが今年最後の大きな買い物になると思います。古本の「川端康成全集」(19巻、新潮社)を、ヤフーオークションで送料込み9,000円で落札しました。意外に安く手に入ったのは、昭和44(1969)年から同49年にかけて刊行された旧版の全集だからで…

その古本屋を訪ねたくなる 〜「森崎書店の日々」八木沢里志

たまたまこれを書いている今日が12月24日で、たまたま「森崎書店の日々」(八木沢里志、小学館)という本を最近読んだのですが、ふと、「これはクリスマスイブにぴったりの小説だ」と思いました。一人だけのイブの夜、ページをめくれば、静かに心が潤ってき…

児童文学の永遠の古典 〜「ナルニア国物語」C・S・ルイス

この物語を初めて読んだのは、小学校の何年生だったろう。やがてあらすじさえ忘れてしまったけれど、あのときページをめくりながら、異世界に飛ばされて大いなる試練に直面した「わくわく」と「どきどき」は、消えることなく心に刻まれました。地面が割れて…

ゆきてかへらぬ それぞれが 〜「中原中也との愛」長谷川泰子 村上護編

男と女とは、いったいなになのか。 「中原中也との愛 ゆきてかへらぬ」(長谷川泰子・村上護編、角川ソフィア文庫)を読み終えて、今更ながらそんな陳腐な問いかけが思い浮かびました。 もとより、人と人の結びつきは一つとして同じでない以上、この問いかけ…