ことばを食する

私的な読書覚え書き。お薦めできると思った本を取り上げます

ブログオープン4カ月のご報告

窓からキンモクセイが風に乗って香ってきます。5月下旬にこのブログを開設し、4カ月と少しになりました。当初はとりあえず3カ月一生懸命やって、その結果を見て運営方法に修正を加えようと思っていました。気づけば今日から10月になり、一度立ち止まることに…

愛憎、矛盾を孕みながら 母と娘 〜「放蕩記」村山由佳

エキセントリックで、性格や行動に歪みのある母に育てられた娘が、やがて大人になって母との関係にどう立ち向かい、新しい自分を作り出していくか。「放蕩記」(村山由佳、集英社文庫)は、ただその一点に向けて積み上げられた長編です。 母と娘であれ、父と…

今夜は手抜きレシピで美味しく 〜2019.9.25 週間ランキング

今週は樹木希林さんの「一切なりゆき」がトップに返り咲き、9位の「この世を生き切る醍醐味」と2冊がベスト10入りです。特に「一切なりゆき」は年間ベストセラーに向けて突っ走っていますね。本のタイトルも上手く付けてあります。「この世を生き切る醍醐味…

十人十色の個性 短編の楽しみ 〜「短編工場」 浅田次郎他12人

短編小説の魅力とは何か、と問われたなら、わたしは「一刀彫りの鮮やかさ」と答えます。一本の彫刻刀でざっくり彫り上げる、刃先の鋭さと角度が生み出す面白さ。彫刻でいえば、手とか顔とか、胴体だけとか、一部を大胆に彫り上げて背後に広がりを獲得した作…

3姉妹が織りなす京都 〜「手のひらの京」綿矢りさ

わたしは京都生まれではないし、住んだこともありません。仕事で、旅行者として、何度か訪れた古都。日本の歴史は嫌いでないし、好きな仏像や記憶に残る場所、シーンもかなりあります。しかし、当たり前ですが通り過ぎる者としての視点しか持ち得ません。 「…

腐女子の次は、裸一貫! 〜2019.9.18 週間ランキング

「裸一貫! つづ井さん」が6位に初のランクインです。ジャンルでいえば「コミックエッセイ」というらしい。ツイッターで人気になって書籍化された「腐女子のつづ井さん」シリーズの新展開。腐女子の次は、裸一貫!になったようです..。作者はもちろん「つづ…

一つの声が届くまでの時間について 〜「ノルウェイの森」村上春樹

なぜ今ごろこの小説を...と言われそうですが、きっかけは9月11日が「公衆電話の日」だったからです。これに引っかけて、翌12日のある新聞に減り続ける公衆電話の記事が載っていました。1900年(明治33)に、日本で初めての公衆電話が上野駅、新橋駅に設置さ…